Publications 出願前調査(Patentability Searches)は、知財部門の出費を増やすのか、それとも、抑えることになるのか? Patentability Searches – Bust or Save In-House Counsel Budgets?

2020年04月09日

Written by Paul C. Haughey (和訳:穐場 仁)

私の専門分野であるエレクトロニクスとソフトウェアの分野では、社内弁護士が「出願前の公知例調査は行う価値が無い」というのをよく耳にする。そのような企業は大量の特許出願を行っており、個々の出願に多くの予算を使う価値はないというのである。このことの成り行きは、通常以下のようになる:

例えば、出願前調査には1件1,000~3,000ドルの費用がかかる。これは、平均すると10件の出願毎に2万ドル追加費用がかかることを意味する。仮に、この調査により2件の出願を取りやめたとすれば、2件の出願準備費用の節約と2万ドルの追加調査費用の収支がトントンとなり得る。一方、たいていの場合、出願は取り止められず、単により狭いクレームを取得することを意味するだけになり、従って、出願準備費用の節約もされない。審査官が調査を行うことにより先行技術と対峙することとなり、それは、代替案である従属クレームで対応せざるを得なくなることを意味するかもしれない。

出願前調査を行わないことは、出願前調査がいろいろな面で費用削減および特許出願の質向上に寄与することを無視するものであり、また、ときには出願準備費用を削減できることを無視するものであると示唆しておきたい。

  1. 出願前調査は、出願準備費用だけでなく、権利化にかかる費用全体を節約することができる。出願前調査を行わずに出願されれば、明細書を準備する費用の他に、特許庁に対する手数料を支払う必要が生ずる。さらに、複数回の補正のコストもかかり、結果として得られるクレームは狭く、価値が無いとして放棄されるか、ほとんど価値の無いまま特許となる。このような場合、しばしば1回以上のRCE(継続審査請求)が行われ審査手続が延長されるため、出願前調査で発明に新規性が無いことがわかれば、合計約4万ドル程度の費用を節約することもできるかもしれない。
  2. 出願前調査が行われ出願された特許に関しては、少なくとも1回の庁指令(office action)を回避することができる。これだけで、出願前調査の余分なコストを賄うことができる。調査により最も広いクレームは明らかに公知だとわかれば、明確に差別化できる点に焦点を当ててクレームを減縮することができる。これを行うことにより、後に補正を行いそのより狭いクレームの拒絶に対して議論する必要を排除することができる。また、容易に見つけられる公知例によって公知であるような広いクレームを避けることにより、あなたが宿題(事前調査)を行っておらず何も知らないと審査官が思い込むことを避けることができる。審査官をそのような意識に置くことは、狭いクレームを予め提示していた場合に比べ、その狭いクレームを得ることをより困難にするだろう。
  3. 出願前調査は、特許の質を向上させる。発明者が公知例に気づいていない頻度は驚くほくほど多い。発明者は公知の製品には気づいているかもしれないが、先行する特許公報や多くの論文には気づいていない。発明者に先行技術を認識させることによって、先行技術と差別化するために、そうでなければ得られなかったかもしれない追加の開示を提供してくれることが多くなるだろう。これは、過度に狭く終わっていたかもしれないか、または、出願に記載された全ての特徴が先行技術に記載されているため放棄しなければならなかったかもしれないクレームのサポートを提供する。発明者たちが庁指令(office action)に対し先行技術との違いを主張する場合、その違いは明細書に記載されていなかったということをしばしば目にしている。
  4. 出願前調査は、IDS (Information Disclosure Statement) のための先行技術を提供する。良い仕事をする審査官に当たらなかった場合、発行された特許は後に攻撃を受けやすいものになる可能性がある。出願前調査から先行技術を引用することによって、その先行技術に基づいて後に特許を攻撃することがより困難となる。
  5. 出願前調査は、簡易なFTO(Freedom To Operate調査)としての役割も果たす。問題となる他者特許を探すFTOはより費用がかかるものであり、その開示内容よりもクレームにより焦点をあてるものではあるが、出願前調査はしばしばFTO調査で明らかにされるのであろう多くの特許を見つけ出すことができる。それにより、どのような問題特許も、設計変更又は非侵害/無効鑑定により早期に対応することができる。これはまた、見つからなかった異なる特許(異なる製品に関するものかもしれない)についての故意侵害の主張に対する防御に役立つあるレベルの誠実さ(diligence)を示すことにもつながる。また、場合によっては、この簡単なFTOが完全なFTOの必要性を明らかにすることもあるかもしれない。

社内でそれを行うか、外部の事務所にそれを求めるか、それを手っ取り早くやるか、それともより広範囲にやるのか、いずれにしても、通常、出願前調査はその費用よりも価値があるものである。


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Paul C. Haughey
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